イオンモール須坂で
ノウフクシンポジウムを開催しました!

場所:イオンモール須坂 イオンシネマ シアター3
実例を交えた活発な意見交換が行われました
当日、会場のイオンシネマには先着申込による50名ほどの参加者が集まりました。座談会のパネリストからはそれぞれの立場で「ノウフク」の意義や魅力、そして今後の課題など、さまざまな意見やアイデアが出されたほか、客席からも、実際に取り組んでいる農業者や障がい者の方のリアルな感想や意見が聞かれました。まだまだ認知度の低い「農業と福祉の連携『ノウフク』」について、身近に感じられ、また深く考える良い機会となりました。
■ガイダンス「みんなで知ろう 農業と福祉のいい関係とは」
前段では、長野県健康福祉部の塩原昭夫次長から、大きなスクリーンを使って「農福連携」の概要が紹介されました。取り組む農業経営体や障がい者就労施設は5年前の約2倍に増えているものの、認知度はまだまだ低い状況にあること、また県としても「農福連携」を知ってもらうためにさまざまな広報啓発活動が必要なことなど、課題もあわせて説明されました。

【1】ノウフク連携の意義と地域における役割
ステージに5人のパネリストを迎え、いよいよトークセッションの開始です。
はじめに、今なぜ農福連携が重要視されるのか、農福連携の意義と役割、課題などについてパネリストに聞きました。
長野県の関昇一郎副知事は、「一時ピークだった220万人の県民は現在3割も減少しており、このままでは10年後には県内の農地の3分の1に担い手がいないという危機的状況にある」と説明。そこで、活躍の場に恵まれない障がい者が農業分野で活躍することができれば、農業者は担い手不足を解消できること。また、障がい者にとっては、さまざまな作業がある農業分野でそれぞれの強みを生かすことで、やりがいや工賃のアップにつながり、社会参加も果たせるという、双方の抱える課題を解決する「win-win」の取組が「農福連携」であると、その可能性を語りました。

作業療法士でもあり、自身でA型B型の就労支援事業所を営んでいる小林博之さんは、障がい者の仕事は「質と量」を果たすことが重要だと話します。「工業系の製造の仕事は1個つくって1円2円にしかならないが、農福連携による作業はスキルアップによってニーズに応えられれば工賃(報酬)のアップが見込め、社会参加を果たすことができる。そのためには、農業者と福祉事業者がお互いに理解し、尊重することが必要」と話し、農業と福祉の両方を理解する支援員の存在の重要性も強調しました。

現在、農業に転身され、長野市で桃を栽培しているという元サッカー選手の大橋良隆さんは、以前「長野県人権大使」を務めていたそうです。現在も農業と並行して福祉事業所で働き、農福連携に深く携わっていることから、農業現場に障がい者を受け入れる際の課題を聞かれました。
「たとえば『枝を拾って』と指示を受けた時、落ちている枝だけでなく、木に生えている枝まで集めてしまうことがある。その人の障がいの特性を理解して、作業内容をていねいに伝える必要がある」とわかりやすく解説してくれました。
経営コンサルタントで、長野県よろず支援拠点のチーフコーディネーターでもある樋口武伸さんは、法律的に企業は従業員の2.5%の障がい者雇用が決められていることを説明。「特性に合った仕事がないと雇用を躊躇している経営者もいるが、作業を細分化しやすい農業は、障がい者雇用の可能性が広がる分野だ」と経営的な視点で説明しました。
【2】成功事例に学ぶ ~現場の取組と成果~
次に、「農福連携」における実際の成功事例を聞きました。
就労支援事業者としてこれまでも実際に農家と連携してきた小林さんは、上田市にある「シャトー・メルシャン椀子(まりこ)ワイナリー」での事例を紹介しました。
「仕事は単発でなく『通年ある』ことがポイント。継続によって作業に『慣れる』ことで、スキルアップができる。椀子ワイナリーで毎年9~10月に行うブドウの収穫作業は、ありがたいことに2019年から7年続いている」。そこで収穫作業をしていた人が仕事ぶりを認められ、農業作業員として直接雇用されています。「その人に何ができるかできないか、特性を把握・分析し、必要なものを足していくことが大事」と支援の重要性を語りました。

つづいて、客席にマイクが回ると、参加者の中から施設利用者の女性が、実体験の感想を披露しました。
「最初は不安だったけれど、太陽の下でのびのび仕事をさせてもらい、ありがたかったです。まわりの人も優しくて、そのうち体力もついてきて、初めて「職場が天国」だと思いました」と明るく話してくれました。

また、東御市で生食用のブドウ農園を営む男性は、「皆でミーティングをしながらPDCAを回すことで、農福連携での作業が3年続いている」と報告しました。複雑な判断と単純作業を切りはなし、特性に合わせて丁寧に説明しながら仕事を振り分けることがポイントだそう。業務を細分化したことによって、社員にも指導がしやすくなるという効果もあったそうです。
「3年経ち、作業にも慣れて成長した姿を見ると、我が子のようにうれしい」と話してくれました。
ステージにマイクが戻り、現場で必要な業務設計や配慮をたずねられたパネリストの小林さんは「心配はいろいろあっても、一回やってみるとわかることがたくさんある。どう工夫したらうまくいくか、人それぞれの特性・適性を見える化するために、まず“お試し”で取り組んでみることが大切」と答えました。
そのほか、夏の暑さ対策として、空調服やネッククーラー、ファンといった熱中症対策アイテムの導入、また移動可能なトイレの導入などを現場への支援として要望しました。
【3】認知の拡大と広報戦略(県民に届けるには)
次に、ノウフク連携の認知度を上げる工夫という点で、(株)ながのアド・ビューロで広告営業責任者として活躍する小野鉄明さんに意見を聞きました。

「デジタルネイティブの若年層に向けてはInstagramやTikTokといったSNSを活用するのが効果的。どんな場所でどんな人がどんな想いで取り組んでいるかストーリー性のあるポジティブな内容を動画などで発信し、消費者が応援したくなるようなPRが必要。」と話しました。またパッケージデザインや統一のブランドマークなどで価値を高めていくことや、試食・イベントの実施など、多角的に発信するためのさまざまなPRのアイデアを提言しました。
そして関副知事が、広報に関する県の取組を発表。「 “農福連携全国都道府県ネットワーク(会長:阿部知事)”の初の試みとして、全国各地で開催しているマルシェなどを訪問した方がデジタルスタンプを取得すると、抽選で賞品がもらえるキャンペーンを実施。本日、イオンモール須坂の会場でも利用可能なので、立ち寄ってほしい」と紹介しました。さらに、広報の専門家と県の職員が協働で構築した「うれしい、おいしい、みんなしあわせ信州」というコンセプトをあらためて発表。今後は農福連携を幅広い年齢に訴求するべく、ターゲット別に新聞、テレビ、SNSなど、広報媒体を使い分けてさまざまに展開していく旨を説明しました。
【4】収益化と持続可能なビジネスモデル構築
つづいて、農福連携を継続して定着させるための工夫やアイデアを話し合いました。
経営コンサルタントの樋口さんは、「農福連携商品は、普通に販売されたのでは埋もれてしまう。マルシェの常設コーナーをつくり、商品にシールを貼ったり、のぼり旗を立てたりして認知を高める必要がある」と提言。また、「価格が高くても収益が取れるように、減農薬などの付加価値が必要。持続可能なビジネスモデルの構築こそが、農福連携を根付かせるカギだ」と話しました。

そして「ノウフク・アワード」を受賞した、松川町の事例を紹介しました。農福連携を実施している農場でつくられた作物を、学校給食で提供。児童生徒に食べてもらい、覚えてもらうことで、スーパーで商品を見つけた際に購買行動につながる循環をつくった好事例でした。

小林さんは、広い視点で農産物の6次化を提案。ワイナリーのショップで販売したレトルト商品の事例をもとに、「たとえば収穫したトマトは、ケチャップに加工したら高単価で販売でき、高収益が得られる。皆が幸せになる地域の構築は農業の6次化にある」と提言しました。
【5】協働のために ~連携体制づくりと今後の支援~
最後に、今後農福連携を進めていく上で、どんな支援、どんな連携体制が必要か考えてみました。
関副知事は、「行政だけでなくJAなどの関係団体や企業などを巻き込んだ連携体制が不可欠」として、全県的な連携体制づくりを推進している現状を説明。また、農福連携促進コーディネーターを県内4地区に配置して農業と福祉のマッチングを支援したり、作業現場で障がいの特性に応じた作業の切り出し、作業の見える化を行う農福連携サポーターの派遣、農業技術指導員の配置など、人材の育成と資質向上をはかっていく意向を説明しました。

樋口さんは、「中長期的な取組ができるのは行政である」とし、さらなる認知拡大、販路確保の支援を県に要望。また、「今日、イオンモール須坂1階のマルシェで売っている“鯉焼(こいやき)”は、農福連携で育てた花豆をあんにして使っていて、ノウフクのシールがついている。これが初期投資。みなさんぜひ買って帰ってください」と宣伝しました。
さらに、「ふるさと納税のノウフク枠」の予算化、また「農福連携事業者による研修会やフォーラムの定期的な開催」による事業者間連携の必要性も提言しました。
これまで出たさまざまな意見やアイデアを受けて関副知事は最後に、「本日話題になった取組を着実に前進させ、『うれしい、おいしい、みんなしあわせ』を実感できる長野県づくりに取り組んでいきます」と宣言し、シンポジウムは閉会しました。
シンポジウム終了後は1Fに移動し、西コートで開催中のノウフクマルシェを視察。樋口さんが紹介した「鯉焼」をはじめ、農福連携でつくられたお菓子や農産物がにぎやかに並び、法被姿のスタッフの呼び込む声で、多くの人が足を止めていました。
